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遠 雷
 ――助けて。
 そう呟くとあなたは目を閉じた。


 あなたは何を望むのだろう、私に。
 そして、私はそれをあなたに与えられるのだろうか。
 遠くでとどろく身も竦むような響きに、足元が揺らぐ。
 代えがたく大切なあなた。
 けれども、それはあなたの気持ちと重なるものではないと思っている。
 そして拒絶すると、あなたは助けを求めて私にすがりついた。
 この胸の中の温かな存在はとても大切で、手放したくない。
 なのに、どうして私たちの気持ちはこんなにも食い違うのだろう。
 唯一無二で大切なのに、失い難いあなたなのに。
 それはあなたの望む形ではないと、あなたは言う。
 私は途方にくれて立ち竦む。
 こんなにも大切なあなた。


 遠雷が私を翻弄する。
 眩暈がして立っていられない。
 私はどこへ行こうとしているのか。
 もう、あなたと共に歩けないと完全に拒絶することも出来ずに。
 あなたはどこへ行こうとしているのか。
 私を連れて――。


 ――助けて。
 すがり付いて熱い吐息でそう囁くあなたの閉じた目からこぼれる涙を私は息苦しい気持ちで見つめるしかなかった。