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花のように
 ただ花のように。
 咲き誇っていればいいと、硬く青い蕾をこじ開け、あなたは言った。


 憂いを含んだ愁眉が笑みの形にかわること。
 それが何よりもの私の喜びだった。
 「愛しているわ、私の可愛い子」
 溢れる愛情をたっぷりと含んだ蜜のような言葉に身をゆだねるのはなんて甘美なのだろう。
 抱き締めてくれるしなやかな腕と柔らかな胸に言いようもない幸福と陽炎のような不安がさざめく。
 「時が止まってしまえばいいのに……」
 不可能だと判っていても呟かずにはいられない。
 このまま抱きしめられたまま、永遠にあなたと繋がっていたい。
 あなたの為に花開いた、あなただけの花のように、ただあなたの傍であなたに愛でられて咲いていたかった。


 でも手折られたのはあなた。
 踏み散らされたあなたを思うと焼け付くような痛みが私を襲う。
 もう、誰も私に愛していると言ってはくれない。
 あなたに深く愛されて青い蕾をこじ開けられ、あなた好みの花を咲かせた私はただ散りぎわをみきわめている。


 ただあなたのためだけに咲き誇る一輪の花でいたかった……。
 あなたのためだけに咲き続けていたかった――。