思いを告げたら、あなたはありがとうと言って幸せそうに笑った。


　大好きで大好きで、苦しくて苦しくて、自分ではもうどうしようもなくなって、衝動に駆られて告げた言葉は、――アイシテル。
　あなたはびっくりした顔を笑みに変え、ほんのりと頬を染めて答えてくれた。
　拒否されないどころかありがとうと言われて、舞い上がった瞬間、突き落とされた。
　「私、皆さんによくそう言われるの。でもとっても嬉しいわ」
　愛され慣れている、慣れ過ぎているその台詞にくらくらと眩暈を覚えてしまう。
　切実な心の吐露にただありがとうと笑って言えるあなたに、それでもどうしようもなく惹きつけられてしまう。
　どんなに言葉を尽くそうとも私の心の声はあなたには届かないのかもしれない。
　それでも言葉にして告げる事に意味があるのだと信じて……。
　けして私を振り返ることのないだろうあなたの傍らにひっそりと立ち続ける。
　いつか、この激情のような想いが私の身体の中から全て抜け落ちて、純粋な親友として存在できる日が来る事を願って。
　欲望に曇らない澄んだ瞳であなたを見守る事が出来るその日が来る事を信じて、あなたの傍に立ち続ける。
　たとえ、振り返ってもらうことがありえない想いでも、この気持ちを簡単に捨て去る事は出来ない。それはあまりにも私に深く根付いてしまっているから。
　捨ててしまえば、私は私ではなくなってしまう。
　あなたへの想いが私を構成する殆どなのだから。
　ただ、私の思いを受け入れてくれるあなたにこれ以上を望むべくもない。
　私の隣でいつものように笑っていてくれればそれだけで私は生きる事が出来ると、生き続けることが出来ると、そう信じて、一人立つ。
　あなたへの激流のような狂おしい愛を抱き締めて。


　思いを告げたら、あなたはありがとうと言って幸せそうに笑った。
　だからそう、わたしもありがとうとあなたに微笑もう。
　願っているのはあなたの幸せだけだから。