片 恋 | |
ずっとずっと好きな人がいる。
それは口もきけないほどの恋。 同性なのに、あの人に、眩暈のような恋をしている。 この同じ空の下、ただあの人が笑っていてくれさえすれば、生きていけると信じていた。 好きで好きで堪らなくてもしかしたら人間はこんな風に恋に狂っていくのかもしれないと、思ってしまうほどに息苦しくて。 狂っていく自分を止められない。 ただ笑っていてくれさえすればよかった。 たとえ私の存在を知らなくても。 なのに。 どうして。 口さえきけないその恋なのに、どうして自分を知ってもらおうと思ったのだろう。 自分の存在をあの人に焼き付けたかった。 一瞬のきらめきでいいから、私と言う存在が生きていることを存在している事を知って欲しかった。 全てが自分のエゴで、何もかもが傲慢だと判っているのに。 判っているのに……。 あの人を閉じ込め拘束し自由を奪って、その柔らかな身体に自分を刻み込みたい。 そうしたところで愛していると言う言葉一つ告げることが出来ないとしても。 でも、そうしてしまったらもう、あの人は私の恋焦がれるあの人ではなくなってしまう。 自由で豊かで朗らかで優しいあの人はきっと消滅してしまうだろう。 この狂気の片恋をどこまで続ければ私は全てを諦めることが出来るのだろう。 私の中からあの人が消えてくれるのだろう。 消し去りたい、消したくない。 私は二つに引き裂かれる。 あの人をめちゃくちゃに踏みにじってしまう前に、全てを台無しにしてしまう前に、私は告げよう。 この狂気の思いを。 それは受け入れてもらえないかもしれないけれど、あの人を守るために。 ああ、でも。 もう遅いのかもしれない。 この思いを告げてあの人が拒否したら、私はどうなってしまうんだろう。 あの人をどうしてしまうんだろう。 苦しくて苦しくて、こんな恋は初めてで。 何もかもが初めてでもう、耐えられそうにない。 |