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ココロノスキマ
 少しだけイライラした声で幼馴染のレイが言う。
 「それはね、誰にも埋める事が出来ないのよ。甘えてちゃ駄目」
 「でも……」
 「もし、もしね、私が君の恋人だったら手助けする事はできるかも知れない。でも私は赤の他人だし、君の恋人でもない」
 それからちょっと少し離れた場所にいる、恋人に申し訳なさそうに目を向けて、
 「そりゃ、私は君が大事だし大好きだけど、出来ない事は出来ないとしか言えない。自分の心の隙間を他人で埋めるようなことをしちゃ駄目だよ」
 私は冷たい幼馴染の言葉に声もなく涙を流す。
 涙が熱くて、悔しくて、次から次ととめどもなく流れ出る。
 すると幼馴染のレイは急に慌てて。レイの恋人は振り返って私を見て眉を顰める。
 そんな顔されたくない。
 だって、レイはずっと私のものだったのに。
 後から来てレイを横取りしたくせに。
 私は精一杯、レイの新しい恋人を睨みつけた。
 「カオリ、泣かないで」
 レイが優しく私を抱きしめてくれる。
 柔らかくて温かで大好きなその腕の中。ずっと私だけのものだったのに。
 悔しくて悔しくて涙が止まらない。
 私だって少し小さいけれど同じように柔らかな胸もお尻もあるのに、どうして私じゃないんだろう。
 どうして私はレイの恋人になれなかったんだろう。
 私だってレイが好きなのに、レイはもう絶対に私のものにはならない。
 私の心の中にいたレイが奪われてしまってぽっかりと穴が開いたそこに、激しい痛みを覚える。
 好きだと何千回何万回言ってもレイにはもう届かない。
 ただ、私はレイの胸の中で泣き続ける事しか出来なかった。
 レイの恋人の前で。