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今日から
:微妙な表現が含まれています)

 脱ぎ捨てた制服をゴミ箱に放り込んで、私は生まれ変わる。
 忘れないでと泣きつくことも、好きだと告白することも耐えて、今日この日を迎えた。
 この日のために用意していた服を纏い、淡い色のルージュをひく。
 三つ編みを解いて髪を整える。
 自分の為にじゃなく、初めて装う。
 制服で通い慣れた道を本来の自分姿になって辿る。
 あなたに会うために――。


 まだ肌寒い3月の半ば、日が長くなったとはいえ薄暗くなった頃あなたは校門から足早に出てきた。
 背筋を伸ばしていつも凛として堂々とした姿勢。
 私の大好きな、あなたの一つ。
 「――先生」
 後姿に声をかけると、あなたはびっくりしたように振り返った。
 「委員長……」
 あなたの唇からこぼれた言葉に私は苦笑した。
 それ、私の名前じゃないし。
 「ユカです、巽優歌」
 「タツミさん……? どうしたのこんな時間に。学校に忘れ物?」
 「はい、とても大事なものを忘れて……」
 不思議そうなあなたに私は告げる。
 「――ずっと、先生が好きでした。愛してます」
 言葉も無く驚きで固まるあなたへ私は一気に告白する。
 「今日から生徒じゃなくなったから、アタックさせて下さい。絶対に先生に私を好きになってもらいたいんです」
 だって私が描く未来は先生と一緒じゃなければ進めないから。
 「……う、嘘でしょ?」
 からかっていると思うのかあなたは私の言葉を頭から否定する。
 素早くほっそりとしたあなたの首に手を回すと少しだけ背伸びして唇を掠め取った。
 これで、私の本気がわかるはず。
 「本気です。付き合ってくれるまで諦めませんから」
 私の言葉にあなたは顔を赤く染めたまま呆然と立ち尽くしていた。
 絶対に諦めない。
 いつか振り向かせて見せる。
 だってずっとずっと好きだったから。
 すべてが、今日から、始まる。