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言葉に、できない
 黙りこむ私に、あなたは少しイラついた顔をする。
 「私達、親友だよね?」
 私の肘を掴むあなたから顔を背ける。
 「違うの?」
 酷く傷ついたようなあなたの顔に私の胸が軋む。
 「じゃぁどうして? 私にも言えない事??」
 私は泣きそうになりながら、ただ、首を振った。


 伝えたい、言葉がある。
 あなたに伝えたい言葉がある。
 私の心の、真実の言葉。
 あなたへの、心、気持ち、そして想い。
 ――言葉にできない。


 あなたに“親友”と言われる度に私の心は張り裂けそうになる。
 大切なあなたにそう言われる身体の奥底から湧き上がる喜びと、あなたを裏切っている私の邪な心の罪深さとに、引き裂かれそうになる。
 「ありがとう……でも」
 私が顔を上げると真剣な眼差しのあなたと眼が合う。
 熱い鉄を流し込まれたかのように眼が痛み、涙が溢れる。
 焼け付くように心が痛み、呼吸を奪われ、言葉を失う。
 でも……あなたにだけは言えないのだ。
 掴まれた肘にそっと自分の手を重ねる。
 温かな、生命の、息づいている体温。
 私は笑う。
 全身全霊を傾けて笑う。
 あなたに笑いかける。
 あなたの親友でい続けるために。
 「ありがとう……でも、大丈夫。なんでもないから」


 伝えたい、言葉がある。
 あなたに伝えたい言葉がある。
 私の心の、真実の言葉。
 あなたへの、心、気持ち、そして想い。
 愛していると、言葉にできない。
 閉ざされた唇は、おそらく永遠にその言葉を紡ぐことを許されない。