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幼馴染み
 片思いをしてた。
 ずっと幼馴染みを好きだった。
 その恋のあまりの苦しさに助けを求めた私を救ってくれたのはハルカだった。
 「今は私を好きじゃなくても、いつか私を好きになってくれるなら……」
 ハルカの腕は温かでどこまでも沈んでいきそうに柔らかだった。
 その柔らかさが、優しさが私を慰めてくれる。
 私を好きだといって愛してくれる。
 私はハルカを愛そうと努力して努力して努力している。
 ハルカは好きだ。でも、それは未だに恋愛感情ではない。
 ハルカの優しさに甘えて、私はハルカを裏切り続ける。
 何故なら私はまだ幼馴染みのカオリを愛し続けているから。
 日々を共有し一番身近にいる愛する人間をどうやったら忘れて、どうやったら他の人間を愛せるのだろう。
 「ゆっくりでいいから。忘れなくていいから。いつか私の方を少しでも多く好きになってくれればいいから……」
 ハルカの優しさが胸に痛い。
 カオリへの愛情が心に痛い。
 カオリが、まるで幼子のように私を求めて泣く。
 親友を盗られたと、地団太を踏みながら泣く。
 その幼い独占欲に痺れるような喜びを感じる自分がいる。
 見つめるハルカの視線を感じながら、私はむせび泣くカオリを抱きしめずにはいられなかった。
 その小さくて温かな身体を離したくない。
 永遠にこうして抱きしめ続けたい。
 手放せば飛び立って逃げていってしまうと判っているから、手を放せない。
 心に広がる暗雲のようなハルカへの罪悪感とその雲間に射す明るく清らかな光のようなカオリへの愛情と。
 もしかしたら私は間違えてしまったのかもしれない。
 これは私の恋で、誰かに助けてもらうものではなかったのかもしれない。
 私のSOSを聞きつけて助けてくれたハルカ。
 でも、私はハルカの腕で安らぐ事が出来ただろうか。その温かなかいなに慰められても、安らぐ事も愛し返すことも出来なかった。
 もしかしたら私はとんでもない間違いを起こしてしまったのかもしれない。
 それでも。
 それでも。
 選んだのは私。
 逃げ出したのは、すがりついたのは、私。
 柔らかでいい匂いのカオリの身体を引き裂かれるような気持ちで自分から引き剥がした。
 愛を告げたい唇を堅く強く噛み締めて。