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さくら
 薄墨を刷いたような空にほんのり色づいた白く浮かぶ桜が滲むように空気に溶けている。
 かすむような視界に胸に染み入るような淡い光。
 その尊いような近寄り難いようなあえかな儚い美しさに、切なさと悲しみが入り混じる。
 それは、まるであなたのよう。
 はるか別次元に存在するように超然とたたずむあなた。
 人ごみに紛れることも身を隠すことも出来ずに、ただ、一人彼方に孤高に立ち尽くす。
 こんなに近くにいるのにいつも遠く、手が届かない。
 相容れない、私達。
 それでも私はあなたを見ている。
 ずっとずっと見続ける。
 この身が滅び、消え去るまで。
 桜吹雪に身をゆだねていると、まるであなたに抱かれているように切ない。
 舞い散る花びらを捕まえるようにいつかあなたを捕まえることが出来たら……。
 ひらひらと、舞い降りる。
 私の心に、花びらのように。
 降り積もるあなたの破片に私は息も出来なくなる。
 ただ静かにひらひらとはらはらと。
 あなたは彼方から私の元へ。
 気が遠くなるような彼方から。