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桜、散る
 あんなに一つだった心が、こんなに離れてしまう時が来るなんて、思ってもみなかった。
 絡み合う眼差しですら熱く溶け合っていた二人が、同じ空間にいることすら出来ない関係になるなんて、思っても見なかった。


 さよならを告げたのは私から。
 でも心変わりをしたのは、あなた。
 あなたの中から急速に私が失われていくのが耐えられなくて私は逃げてしまった。
 でも判っていた。その流れは止められないし、私達のあり方こそが不自然だと言うことを。
 永遠を信じていたこともある。
 信じたいと縋っていただけかも知れないけれど。
 あの、ひどく優しい、穏やかで切ないような日々が終わることをもしかしたら二人とも知っていたのかも知れない。
 苦しいような甘いうずきも触れ合うそこかしこから流れてくる熱い気持ちも、今は抱き合っていても感じられない。
 だから、そう。
 私にはその言葉しか残されていなかった……。
 縋りついて泣き喚いても、もう、時は戻らないのだ。
 冷え切った心が再加熱することは無い。
 ただ、そう。
 私の心はあの頃と少しも変わっていないことだけ、それだけはどうしても告げたかった。未練と笑われてもそれは私にとってとても大事なことだったから。
 あなたは去り、私は残る。あの頃のまま一歩もその場から動けない。


 そして今、桜、散る。