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夢のつづき
 やわらかに笑って甘く囁かれる愛の言葉に、夢だと気づいた。
 だって、あなたが私を好きになるわけがないから。
 この温かな腕も苦しいくらいの抱擁も、降るようなキスもすべて夢なのだ。
 現実にはありえないそのすべてに、心が冷えてゆく。
 夢はとても残酷だ。
 夢を見ながら夢だと気づくその空しさに心が悲鳴を上げる。
 これは私の独りよがりの醜い願望なのだと、夢はまざまざと知らしめて秘めたる気持ちをすべて暴く。
 夢で、妄想で、私があなたを穢していると、私に知らしめる。
 夢の中であなたに愛の言葉を囁かれて、私は思いの丈をあなたに告げる。
 夢の中ではこんなに簡単な事なのに、現実にはとても難しい。
 あなたはただの友達で、ストレートで、そして恋人がいる。
 夢はとても甘美でそして悲しい。
 私の夢ではあなたは私を誰よりも愛していて、私の前にあなたのすべてを投げ出してくれる。
 それはあなたの人生でさえも。
 そして私はあなたのすべてを押し開き、確認を繰り返す。
 まるで自分のものだと刻印するように。
 あなたの吐息ですらも自分のものにして有頂天な私の心にひやりと冷たいものが刺さる。
 その痛みが、すべては夢だと私に教える。
 すべてが私の醜い願望だと。


 もう少しだけ夢の続きを見ていたい。
 この心の痛みが少しでも和らぐまで。
 あなたに愛されている夢を見ていたい。
 いつか現実の世界であなたへの思いに決別する事が出来るようになるまで。
 この甘美な夢に甘やかされていたい。
 たとえ目覚めた後、空しさに涙しようとも。