雨、上がる 1


 うっすらと明るい空から降しきる雨が細く銀色に光る。
 壁一面が総ガラスの窓越しにはるかは外をぼんやりと眺めていた。
「外村さん??」
 遠慮がちにかけられた柔らかな声に、はっと我に返る。
 向かいの席にはかつての同僚である長谷川ひろが座っていた。
 この状態を数日前の自分からはどうしたって想像できないだろう。
 遼は央との再会とここ数日のやり取りをぼんやりと反芻していた。





 長谷川央は外村遼の勤めていた百貨店の2年後輩だった。百貨店協会に属さない若年層向けの百貨店の別館であるインテリア館に遼は5年ほど、2年遅く入社した央は3年ほど勤めた。担当フロアが違ったため二人はほとんど交流もなく、同期ではないので行き帰りに挨拶を交し合う程度の知人だった。
 そしてかねてから接客の仕事が自分に合わないと思っていた遼は規模縮小のため店舗が閉鎖されるのを機に退職した。央は別店舗に配属されたが、もともとインテリアを扱いたくて入社していたので本館であるファッション館は水が合わずに1年もしないで辞めてしまった。今は資格をとって家業の不動産を手伝っている。
 その央と再会をしたのはたった3日前、大安吉日の日曜日、友人の結婚式の会場でだった。