■ エネルギー
 エステに行って、サウナに行って、マッサージに行って、ネイルサロンに行って、美容院に行って、ピカピカのつるつるのプルプルになって。
 舞台を見に行って、映画を見て、クラシックコンサートに行って、美術館を巡って。
 忙しくてずっと出来なかった事を全部した。
 でも満足感も充実感もなくて、なんだかいつも以上に寂しくなってしまった。
 友達とフレンチを食べに行っても、懐石を食べに行っても、イタリアンを食べに行っても、ホテルの高層ラウンジで夜景を見ながらお酒を飲み交わしても、満たされる事がない。
 ただ一つの、理由。
 あなたがいないから。
 あなたが一緒じゃないから。
 相手があなたじゃないから。
 私の生活にはこんなにもあなたが浸透してしまっている。
 私の身体の中からあなたを失くしたら私はきっと抜け殻になってしまう。
 そんなにもあなたは私の一部になっている。


 大丈夫、一週間ぐらい待ってられる。
 もっと長く会えなかったことだってあるから。
 ただ、今は遠い場所にいるあなたに、慣れない異国で頑張っているあなたに、何事もありませんように。
 無事に帰ってこられますように。
 絶えずそんなことばかりを考えてしまって、頭の中はあなたの事でいっぱい。
 傍にいる時よりもずっとずっとあなたの事ばかり考えている。
 あなたの笑った顔とか何気ない髪をかき上げるしぐさとか、長い手足を無造作に投げ出して子供のように寝ころがってリラックスしている姿とか。
 まるで今ここにいて見ているかのようにあなたが思い浮かぶ。
 そしてほんの少し幸せになる。
 何年も一緒にいるのに、まだ恋焦がれる自分がいることが不思議。
 それはもしかしたら平坦な道じゃないからなのかもしれないけれど。
 普通ではない幸せだからいつまでもあなたに恋していられるのかもしれない。
 二人の間に言葉は少ないけれど相手を想っている気持ちだけは触れ合う指先からですら感じられる、私達。
 あなたがいない、今は寂しいけれど、私達には未来がある。
 もうお互いしか考えられない二人だから。


 「ただいま〜」
 予定より早く帰って来たあなたに私は熱烈すぎる大歓迎をしてあなたにびっくりされてしまう。
 こんなに長く辛い休日は初めて過ごした。
 残りの休日はほんの少しだけれど、失ったものを埋めるようにあなたと一緒に過ごしたい。
 抱き締めたこの腕は生涯離さなくていいのだから。
 「お帰りなさい」
 枯渇しそうだったあなたをたっぷり補充しよう。
 あなたは私のエネルギーの源。


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二人の日常

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