夢の中 4
告白したのはサヤからだった。
女子高に通っていた二人は3年生で初めて同じクラスになり、急速に仲良くなった。
そして、それが友情ではないと気付いたのは夏の終わりだった。
一緒にいると楽しくて心がふわふわする。
こんなに大好きな大親友に出会えるなんてなんてラッキーなんだろうと思っていたサヤは、自分の気持ちに愕然とした。
今まで恋をしてこなかったわけではない。
そして、まさか自分が同性を好きになるとは思わなかった。
でも、しかしこれは恋だった。
これが恋ではなかったら、今までのは全て恋ではなかったという事になる。
そんなことは無い。だからこれは恋なのだ。
自覚してしまった後は全てが辛かった。
他の友達と話しているだけでどうしようもない嫉妬と独占欲に襲われるのだ。
サヤはこんなに醜い自分を今まで知らなかった。
そう思った時、今までの恋は恋じゃなかったことに気が付いた。
これが本当の恋なんだ。
自分で自分の感情をコントロールすることが難しくて、常に嫉妬や独占欲にさいなまれる。好きな人の一挙一動で浮き沈みする。常に気持ちが定まらなくていつも所在無く、心もとない。
息も出来ないほどの恋にサヤは翻弄された。
はじめはただ、見ているだけでよかった。
見ているだけで幸せになり、笑顔一つで天にも昇る。
でも、高校を卒業することによってサヤは大好きなカズハと離れ離れになってしまう。
カズハは上京して大学へ通い、サヤは地元の短大に通うのだ。
良くて盆と正月の年に二回しか会えなくなる。それも必ず会えるわけではない。そのどちらの時も田舎は忙しいのだ。特に女手は必要で会う暇はないかも知れない。
そうしたら二人の友情と言う関係はあっけなく破綻してしまう。
そうであるなら、とサヤは考えた。
どうせ今後殆ど会えなくなるなら、自分の気持ちを告げてしまおうと。
受け入れられることの無い気持ちだけれど、告白すれば自分なりに納得がいって、次の一歩をを踏み出すことが出来るかもしれない。
でなければこの恋に囚われて一生忘れることも叶える事も出来ずにここに立ち尽くすことになってしまうかもしれない。
だから卒業式が終わった帰り道。
カズハといつも別れる場所で、サヤは告げたのだ。
「――ずっとカズハが好きだった。大好き。本当は離れたくない」
カズハは少し困ったような顔をして、
「ありがと。私もサーヤが好きだよ。この一年間、楽しかった」
「違うの!」
サヤは思わず叫んでしまった。
「こんなのおかしいし、気持ち悪いと思われるかもしれないけど、私はカズハを愛してるの。カズハと仲良くする誰かにいつも嫉妬してた……」
「サーヤ……」
驚愕したカズハの顔が次第にふんわりと綻んでゆく。
その輝くような笑顔に、サヤはますます恋に落ちてしまった。
「ありがとう。私もサーヤを愛してるよ」
それが、二人の始まりだった。