それはいつかくる夢の終わり 3
「なぁになぁに、その熟年夫婦みたいな会話は!あ〜あ、失恋の腹いせに八つ当たりしに来たのに。
ぜんっぜん、まーったく面白くないんだけどっ!
毎回あてが外れても懲りずに八つ当たりしようと思って来ちゃう私も私なんだけどさ、10年近くまったく進展がないあんた達もどうなのよ。
なんかさ、見てて凄くイライラするんだけど。
あー、ストレス溜まる。
私がちょっかい出すんじゃなくてさ、初めはやっぱりお互いで気づいて告げ合うべきだと思ってずっと黙ってたんだけどね。それにしたって長すぎるよ、あんた達の片思い。二人とも私に嫉妬して面白いかなぁとか途中から思ったけどねー。
気持ちが通じてないのにさ、なんていうか、この熟年夫婦のノリってどうよ。
面白がる私もいけないんだろうけど、そんなに相手の事判るならいい加減自分の内側ばっかり見てないで相手の気持ちに気づいたら??
あ〜ぁ、ほんっと馬鹿馬鹿しい。
失恋したっていうのにぜんぜん慰めにならないし。返って見せつけられてストレス溜まっちゃうし。
もうやんなっちゃう。
私、帰る。
じゃぁねー!」
呆然と立ち竦む二人をよそに私はふわふわとする身体を素早く動かない足でよたよたと玄関の外まで運んだ。
大きな音を立てて背後で閉まった扉に寄りかかり、大きく息をすって目を閉じる。
私は志帆子。
二人の事を二人以上によく知る、親友と言っても過言じゃない、私。
二人は私に一生感謝するといい。
背後の部屋の中の二人の今後を想像すると自然と口元が緩むのに、不思議と鼻の奥がつーんと痛んだ。
END