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分岐点 2
あなたは言った。
彼女の傍にいるために、変わらなければならなかったと。
変わりたかったと。
彼女に相応しくなりたかったと。
でも、そう、彼女は振り向いてくれる事はなかったけれど、と。
ふんわりと笑う白い顔が好き。
形のいい薄紅色の唇が、その柔らかさや弾力が好き。
ため息みたいな甘い吐息が好き。
もう10年近く付き合っているのに、どうしてこんなに好きなのだろう。
出会って20年。
そのうちの2年は先輩と後輩の間柄。
8年は親密な親友。
あとの10年は恋人同士。
高校を卒業する頃にはもう私はあなたが特別だった。
でも、彼女に夢中なあなたの心に私が入るすきは無かった。
その8年の間に私は3人の女の子と付き合って同棲してた。
そこにあなたが現れると私は付き合っている女の子が目に入らなくなってしまう。
3回ともそれが原因で別れたのだ。
そんなことはあなたは知らないだろうけれど。
その間にあなたの愛する彼女は結婚してしまった。
その時の自棄酒に付き合って。
次に自棄酒したのは彼女に子供が生まれた時。
もしかしたら彼女と相手が別れるのではないかとあなたは思ってたと言った。
でも子供が出来たからそれもなくなるだろうと。
あなたと彼女が会ったのはそれが最後だった。
もう会わないと泣いたあなたに私は告白した。
10年前からずっとあなたを見ていたと。
あなたは涙を流した。
その涙は止まらなかった。
「私を愛してくれる人がいるなんて……」
あなたは知らない。あなたを愛する人はたくさん居た。
ただ、あなたが全てを拒絶していただけだという事を。
「――傍にいてくれる??」
疲れ切ったあなたがそうすがると私は何度も頷いた。
10年も愛してきて、もう自分が心変わりするなんてありえないと思っていたから。
そして私達は寄り添いながら暮らして来た。
あなたは徐々に私の愛に応えてくれるようになった。
その気持ちを言葉にしてくれるようになった。
――それでも、未だに聞けないことがある。
私と彼女、どちらが好きかと。
愛しているから、怖くて聞けない。