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落 日 〜ただひとたびの〜 1
それを恋と呼べるなら、たった一度の恋、初恋。
その名も無き思いを恋と呼べないのであれば、生まれてから一度も恋をした事が無いと言う事になる。
そう言って、彼女は空を見上げた。
舞利子が広瀬満と知り合ったのはクラスメイトの橘美弥の友達のそのまた友達だという事で、きっかけはもうよく覚えていない。
ただなんとなく二人に歩み寄りがあったのだ。
だからそれはきっと運命的な出会いと言うわけではなかった。
広瀬は美術部に所属していていつもキャンバスに向かっていた。
夕暮れの放課後、舞利子は橘と二人でよく広瀬しか残っていない美術部に顔を出していた。
橘とは高校に入学してから友達になった。
舞利子には不思議な吸引力があるのか、いつの間にか特に意図しなくても話題の中心にいる。
おっとりと育てられた割には言いたい事ははっきりと言うタイプで高校1年生なのに地にしっかりと足をつけて立っているような印象があった。
数少ない同じ中学出身のクラスメイトには「いつも一段高いところから見下ろされている気がする」と時々いわれてしまう位に。
中心にいながらもクラスに溶け込めきれていない舞利子に「初めは怖いと思ったけどどうしても友達になりたかった」とそれは後々の告白になるのだが近づいてきたのは橘だった。